T紡績
やけに番号が大きい。
30年前のアイドルと言えばピンクレディー。
私の母もそれはもう熱狂的ファンだった。
もちろん見たことも聞いたこともない映画。
ググッたら1961年10月公開。古い・・・
建物横の青い扉を開くと、二階への階段があった。
車や女性のポスターが貼ってある。男の部屋?
・・・この建物自体、もう長くないかも。
冷蔵庫「ボスケテ... |;´A`|」
よく見ると「定員」と書いてある。
やはり一部屋に何人か住んでいたようだ。
さて、ここで私はこの危険な廊下を進むべきかどうか迷った。
しかし中途半端ではやはり気分が良くない。結局進むことに。
そして・・・
最後の住人に出会ってしまった。
建物の朽ち具合から考えて、恐らく5年10年どころではあるまい。
むしろここは、この人の死をもって廃墟となったかも知れない。
壁のカレンダー。
年号が書いてないので断定はできないが、あの時刻表や日付からだと
平成元年の可能性が高いのではないかと思う。
警察が到着し、実況見分が始まる。
近年は老人の孤独死が増えてきているが、大抵は親族が見つけると言う。
今回私があの人を発見したことは、果たして親族がいないことを意味しているのか。
「無縁仏にはしたくない」との警察官の言葉に、私は頷いた。
日も暮れたが、私は最後の住人がここを離れるのを見送った。
本来眠るべき場所で眠ってくれれば、今日私が訪れた意味もあるというもの。
なお、一ヵ月後に訊いた際には「未だ身元調査中」とのことだった。
一刻も早く、親族の方が見つかり供養して頂けることを願う。